俳句に欠かせない、季語。
春であれば「立春」「梅」「受験」などが季語の一例として挙げられます。
この連載では競馬大好き俳人である筆者が、季語の使われている競馬のレース「季語レース」をご紹介していきます。
今週取り上げる季語レースは、きさらぎ賞です!
きさらぎ賞とは
きさらぎ賞は、3歳馬による重賞競走です。
格付けはG3のレースとなっています。
平成3年以降は京都競馬場の芝1800mで行われていますが、今年は京都競馬場が工事中のため、中京競馬場・芝2000mに条件が変更されます。
過去の出走馬からはオルフェーヴル(3着)、サトノダイヤモンド(1着)などクラシック活躍馬が多数輩出されており、春のクラシックへの前哨戦としても注目されます。
近年は少頭数となることが多く、今年は11頭で行われます。
季語:如月
きさらぎ賞の由来である「きさらぎ」は春の季語です。
「きさらぎ」は「如月」と書き、陰暦2月の異名となっています。
語源は、「寒さのために衣を更に重ね着る」ことから(諸説あり)。
「如月」は、春ではあるけれどまだ完全に春が深まるまではいかない、ぬくもりを持ちつつもまだ凛とした空気を孕んでいる季語だと筆者は考えます。
そんな季語を冠された「きさらぎ賞」はその名の通り、2月の初旬~中旬に行われるレースとなっています。
きさらぎや指笛で鳥呼んでゐる 廣瀬町子
次に、「きさらぎ」の句をご紹介します。
〈きさらぎや指笛で鳥呼んでゐる〉という廣瀬町子さんの句です。
時候の季語、特に「二月」「如月」などのその月の名を入れた句は難しいのですが、掲句は「きさらぎ」の感じを非常にうまく捉えていると思います。
前述の通り「きさらぎ」はあたたかさの中にも凛とした空気の漂う季語です。
「指笛」のぴぃという高い鋭い音と「鳥呼んでゐる」というやさしさに満ちた動作が、「きさらぎ」の雰囲気と実にぴったり合います。
如月と表記せず「きさらぎ」とひらがなにしたことで、作者の慈愛が句全体を包み込み、春の訪れの喜びを感じます。
過去の優勝馬:ナリタトップロード
数多くの名馬を輩出してきたきさらぎ賞。
その過去の優勝馬の中からナリタトップロードの思い出を綴りたいと思います。
ナリタトップロードは渡辺薫彦騎手(現・調教師)を主な鞍上に据え、1998年~2002年に活躍しました。
テイエムオペラオーと同世代ということもあり勝鞍にはあまり恵まれませんでしたが、筆者は大好きな馬でした。
中でも、そのテイエムオペラオーをクビ差凌いで1着となった菊花賞が特に印象に残っています。
そしてもうひとつ印象的なレースは、2001年の京都大賞典。
ステイゴールドが最後の直線で斜行し、ナリタトップロードの進路を妨害。
ナリタトップロードの鞍上・渡辺薫彦騎手を落馬させてしまうという事件がありました。
ステイゴールドは1着で入線しましたが、審議の末に失格となりました。
この件があるので、ナリタトップロードのことを思い出すときは今でも「ごめんなさい!!」の気持ちが消えません。(筆者は熱烈なステイゴールドファン)
それがなくとも、重賞戦線で頑張り続けるナリタトップロードの姿は心に残っており、今でも好きな1頭です。
美しい栗毛と、逞しさを感じるその馬体も印象的でした。
2021年きさらぎ賞注目馬
今年のきさらぎ賞はラーゴムに注目しています。
デビューからここまで3戦して、1着1回2着2回と堅実な走りをしてきた馬です。
1着を譲った相手もクラシック戦線で活躍するだろうと目される馬たちで、レースぶりからも能力の高さが感じられます。
そしてなんと言ってもラーゴムの父はオルフェーヴル、父の父はステイゴールドですから、応援しないわけにはいきません。
まだ成長途上とは思いますが、ここは楽に勝ってもおかしくない馬だと思っています。
クラシックの大舞台へ向けて、好調なスタートを切りたいところです。
笠原小百合 記