俳句に欠かせない、季語。
春であれば「晩春」「風車」「新社員」などが季語の一例として挙げられます。
この連載では競馬大好き俳人である筆者が、季語の使われている競馬のレース「季語レース」をご紹介していきます。
今週取り上げる季語レースは、忘れな草賞です!
忘れな草賞とは
忘れな草賞は3歳牝馬の出走できるオープン特別で、リステッド競走に指定されています。
コースは阪神競馬場の芝2000mです。
3歳牝馬クラシック第一冠である桜花賞と同日に行われ、残念ながら桜花賞に間に合わなかった馬やオークスを目標として据えている馬など状況も様々な乙女たちが出走します。
また、レース名である「忘れな草」の花言葉は「私を忘れないで」です。
華やかな大舞台・桜花賞の直前に行われるレースということで、この花言葉がますます胸に響きます。
次なる大舞台を夢見る乙女たちを応援したくなるレースです。
季語:忘れな草
忘れな草賞の由来である「勿忘草」は春の植物の季語です。
ムサラキ科の多年草で、1センチに満たないほどのとても小さな薄紫色の花をつけます。
傍題は「ミヨソティス」「わするな草」「藍微塵」などがあります。
「ミヨソティス」は学名で、「ハツカネズミの耳」という意味があるそうです。
とても愛らしく、またその名も印象的なため、多くの人に好まれる花です。
花よりも勿忘草といふ名摘む 粟津松彩子
次に、「勿忘草」の句をご紹介します。
〈花よりも勿忘草といふ名摘む〉という粟津松彩子の句です。
実際の花を見てもわからないけれど「勿忘草」という名は知っている、という人は多いのではないでしょうか。
勿忘草を摘んでいるとき、花そのものを摘むというよりは、花の名を摘んでいるような感覚を作者は覚えました。
それだけ「勿忘草」という名は印象的で心に残るということでしょう。
とても可愛らしい共感と発見がある句だと思います。
一方で、名が独り歩きしてしまった「勿忘草」の切なさや哀れさも伝わってくるようにわたしには思えました。
人間に意味を与えられた「勿忘草」は、人間の手によって摘まれていきます。
意味深な名を持つ花は愛されもしますが、愛する側も愛される側もそれで本当に幸せなのかどうか。
上辺だけで成り立つ世界のやるせなさが感じられました。
なんだか少し虚しさが残る、そんな読後感をそれでもいつまでも味わっていたくなるような一句です。
過去の優勝馬:ラヴズオンリーユー
忘れな草賞過去の優勝馬の中からラヴズオンリーユーについて書きます。
ラヴズオンリーユーは2019年のオークス(優駿牝馬)優勝馬です。
先日、3/27にはドバイシーマクラシックで3着となり、次走は4/25、香港・シャティン競馬場で行われるクイーンエリザベス2世カップに出走予定と、海外でも活躍しています。
ラヴズオンリーユーは忘れな草賞の同日に行われる桜花賞への出走を目指していました。
しかし年始に細菌性の疾患を発症するというアクシデントが起こり、前哨戦等の出走が難しくなりオークスを目標とすることに。
ローテーションの関係で急仕上げで出走した忘れな草では3馬身差で勝利し、デビューから無敗の3連勝をあげました。
2歳新馬、白菊賞、忘れな草賞という3連勝でしたが、有力馬と対戦していないためその強さは未知数だと考える人が当時は多かったのではないでしょうか。
しかし、迎えたオークスでは1番人気に支持され、見事優勝。
3歳牝馬の頂点へと上り詰めました。
と、あっさり書いてしまいましたが、新進気鋭の馬主さんということもあり、当時はとても盛り上がっていました。
ラヴズオンリーユーの馬主はDMMドリームクラブ。
我が家も以前1頭一口を持っていた一口馬主のクラブです。
クラブに取材させていただいたこともあり、競馬ニュース&コラムサイト「ウマフリ」にて記事も書かせていただきました。
その節は大変お世話になりました!
そんなこともあり、個人的に思い入れのあるラヴズオンリーユー。
3歳女王という頂点を知る彼女なら、きっとこれからも力強い走りを見せてくれるはず。
近いうちに競馬場で会えたら嬉しいなと思っている一頭です。
2021年忘れな草賞注目馬
まず、血統表をぜひご覧になってみてほしいです。
父 エイシンヒカリ
母父 エイシンワシントン
母母 エイシンサイレンス
なんとも美しくエイシンが揃い踏みです!
こういう面白い血統を発見すると、ひとりでニヤニヤしてしまいます。
競馬は血統表を眺めるのも楽しいです。
エイシンヒテンは前3走でそれぞれ、シゲルピンクルビー、アカイトリノムスメ、ソダシという桜花賞に出走する有力馬たちに敗れています。
彼女たちと同じレースに出走するだけの力はありますので、ここではなんとか頑張って欲しいです。
桜花賞前のこの忘れな草賞で「私を忘れないで!」とばかりに走り切ることを願って、注目馬として挙げたいと思います。
笠原小百合 記