俳句に欠かせない、季語。
春であれば「春の雨」「雲雀」「ぶらんこ」などが季語の一例として挙げられます。
この連載では競馬大好き俳人である筆者が、季語の使われている競馬のレース「季語レース」をご紹介していきます。
今回取り上げる季語レースは、東風ステークスです!
東風ステークスとは
東風ステークスは4歳以上が出走できるオープンクラスのレースです。
グレード競走(G1、G2、G3)の下の格付けであるリステッド競走に指定されています。
舞台は中山競馬場、芝1600m。
どの馬もこのリステッド競走を勝って、戦績に箔をつけたいところではないでしょうか。
季語:東風
東風ステークスの由来である「東風」は春の天文の季語です。
東風は「こち」と読み、漢字の通り、東から吹く風のことを言います。
まだ春浅い頃のやや荒い風で、春の訪れを告げる風です。
『拾遺集』の菅原道真の〈こち吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな〉という歌が有名です。
「東風」は「梅の花」を咲かせる風ともされ、「梅東風」という傍題もあります。
他にも強東風、朝東風、夕東風、雲雀東風、鰆東風、桜東風など、傍題のバリエーションの多い季語です。
どの東風を選択するかによって、句の表情は大きく変わるのではないでしょうか。
東風吹くや耳現はるゝうなゐ髪 杉田久女
次に「東風」の句をご紹介します。
〈東風吹くや耳現はるゝうなゐ髪〉という杉田久女の句です。
「うなゐ髪」とはうなじのあたりで切り下げておく子どもの髪型のことです。
東風が吹いて、子どもの髪が流れ、愛らしい耳が現れる。
久女はそこに「春」を感じたのでしょう。
春の訪れの少しくすぐったいような喜びの気持ちが、この句には託されているように思います。
下五を「耳」に着地せず「うなゐ髪」としたことで、髪が風に吹かれる動きを感じることのできる句に仕上がっています。
過去の優勝馬:ショウワモダン
東風ステークス過去の優勝馬の中からショウワモダンについて書きます。
ショウワモダンは2度東風ステークスに出走し、それぞれ1着、3着という好成績を収めています。
マイル戦である1600m前後の距離のレースを得意としていました。
2010年の安田記念を勝利したG1馬で、ショウワモダンの父エアジハードも安田記念を制しており、父子制覇となっています。
競走馬引退後は馬事公苑にて乗馬となりましたが、馬房での事故によりその生涯を閉じました。
この時は本当に深い悲しみに暮れました。
馬事公苑なら近いので、会いに行けると思っていました。
引退したら穏やかに余生を過ごして欲しいと誰もが願っていたはずです。
また、勝利した安田記念でコンビを組んでいたのは今は亡き後藤浩輝騎手でした。
後藤騎手はこれが4度目のG1勝利で、ゴール直後に叫びながら力強いガッツポーズを見せてくれたこと、鮮明に記憶しています。
馬も人も、いつ会えなくなってしまうかわからない。
だから、会いたいときに、会えるときに会いに行こう。
そんなことをわたしに改めて強く教えてくれたのが、ショウワモダンと後藤浩輝騎手でした。
2021年東風ステークス注目馬
今年の東風ステークスの注目馬はバレリオです。
またまたステイゴールド産駒で恐縮なのですが、ステイゴールド一族箱推しなのでどうかお許しを。
中でも残り僅かなステイゴールド直仔は、応援しないわけにはいきません。
バレリオはデビューから今まで2000m前後の距離のレースに出走していました。
東風ステークスは1600mなので、今回が初のマイル戦です。
戦績が思わしくない現状を打破しようと、陣営も色々お考えがあってのことでしょう。
今回、記事公開の時点ですでに東風ステークスは終了しています。
レース結果が出ておりまして、バレリオは12着でした。
6歳にして僅か14戦しかしていないので、まだこれからだと思います。
適性にピタリとハマれば、復活もあるのではないでしょうか。
今後のバレリオの活躍に期待したいです。
笠原小百合 記