俳句をやっていると、普段の生活の中では知り合えないような方々と句座を共にすることがある。
夏目たかしさんも私にとってそんな御方のひとり。
とある超結社のネット句会でご一緒させていただいているのだが、
つい最近まで夏目さんが東京逓信病院名誉院長だとは存じ上げず。
句集『かたつぶり』をご上梓されたことをきっかけに、そのような大変なお仕事をされている方だと知り、驚いた。
句集『かたつぶり』には、夏目さんのそのようなお仕事の様子を垣間見ることの出来る御句も多数収められている。
平成天皇の主治医という重大な職務を俳句にされているが、これはまさに夏目さんにしか詠めないことだ。
しかし、それだけではない。
何気ない日常をしっかりと描かれた句にこそ、夏目さんの俳句の佳さがあると私は思う。
改めて、俳句というのはその人の人柄が如実に表れるものなのだ。
夏目さんにお会いしたことはないというのに、すっかりそのお人柄に魅力を感じてしまっている自分がいる。
俳句って本当に面白い、と思う。
これからも句会を通して、夏目さんと交流を持てることを嬉しく思う。
夏目さん、この度は句集『かたつぶり』をご恵贈賜りまして、誠にありがとうございました。
いつかお会い出来る日を楽しみに、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
以下、句集『かたつぶり』より特に好きな十句をご紹介して、ブログを終わります。
妃殿下の青きコートや白木蓮
侘助や正直に出る腱反射
あぢさゐに頬なでらるる通用門
点滴の合間に桜見て回る
聞きたきは律の言ひ分鶏頭花
訳ありてふワイングラスや酉の市
となり家もそのとなり家もきんもくせい
ででむしに紆余曲折のありにけり
パスポートの次の十年朧月
先入観払へど月に兎住む
句集『かたつぶり』夏目たかし(角川書店)より
笠原小百合 記