俳句とみる夢

笠原小百合の俳句な日々。

池田澄子句集『月と書く』より好きな十句

本来であれば荻窪の鱗さんの読書会(昼)に参加の予定だったが、諸事情により欠席に。

課題本である池田澄子さんの句集『月と書く』より十句を選んでいたので、今日はそちらをご紹介したい。

 

池田澄子句集『月と書く』より好きな十句

 

秋祭ゆく水に灯の映りそむ

門灯を点けると暮れて白椿

見つめたり喉のぞいたり初鏡

痛くないように蜜柑を投げてよこす

梅園を歩き桜の話など

日の暮に少し間のある酔芙蓉

蓮ぽっとひらき送電線きれい

逢う前の髪を手櫛の涼しさよ

小鳥来て妹ひとつ歳とりぬ

蝶よ川の向こうの蝶は邪魔ですか

 

 

読書会では「特選」を一句選ぶことになっており、

わたしは〈蝶よ川の向こうの蝶は邪魔ですか〉を特選とした。

 

最も心に響いた句を特選としたわけだが、迷いがなかったわけではない。

普段自分が詠んでいる俳句のスタイルと掲句のそれとが大きく異なっているのが迷いの理由だ。

こういう俳句もあるのか!と素直に受け入れている自分と、

こういう俳句もあるのか?と訝しがっている自分と。

その両方が確かに存在していて、それが迷いの理由である。

 

具体的には「口語調」であることが引っかかっていたのだと思う。

そして、詩情の強さ。

自分をなるべく抑えるように、と教えられてきた身としては、抵抗がないわけではない。

けれど、だからこそなのか、強く惹かれるものが掲句にはあった。

それに、自分が知っている俳句しか俳句ではないと捉えるのは、なんとも寂しいではないか。

 

自分の心に忠実に。

最近、選句をする際に心がけていることのひとつでもある。

わたしの心を捕らえて離さない強さが掲句には確かにあった。

 

 

『月と書く』では、全体的に読んでみて、そっと置かれたような句に惹かれた。

何気ない句、とでも言うべきか。

作者のしなやかな心の動きが見えるようで、読者としても句に寄り添いたくなる。

池田澄子さんの句は、読み手との語り合いなのだと思う。

そしてその読み手には、澄子さんご自身も含まれているのだろうなと感じる。

やさしさもあり、激しさもあり。

こういう句集が、「血の通った」句集なのだろう。

 

わたしももう少しだけ自分に素直に、句を詠んでみたいと思った。

 

 

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小百合 記